阿部智里さんの八咫烏(やたがらす)シリーズにハマっている。八咫烏シリーズとは、簡単に言うと、烏にもなれる人型の生き物たちのファンタジー小説。コミカライズもされ、NHKでアニメが放送されていた。
第一部を読み終えた私は、第二部でとんでもないことが起こるらしいことを知っていた。早く第二部を読み始めたい…しかし、外伝がその間にあるのだ。「外伝から読んだ方がいい」ということなので、しぶしぶ外伝を読み始めた。外伝、面白かった!!
八咫烏シリーズは、登場人物のキャラクターが良い。謎めいている麗人、奈月彦。お調子者だが、キレ者でもある雪哉。さっぱりかっこいい浜木綿。ゆるふわなあせび。好きになれるキャラがどこかにはいる。それに加え会話は軽妙で読み進めやすい。読み慣れない名刺が並んだりはするが、あっという間に慣れた。構成の良さで飽きさせないし、巻が進むごとに世界の奥行きも広がる。そこが楽しい。第一部後半はあっという間に読み終わっていた。その頃には、どのキャラクターにも思い入れがある状態だった。
外伝は、八咫烏シリーズの登場人物たちが出てくる6つの小話が収録されている。そのキャラクターたちのことをより深く知る機会が外伝なんだと分かった。楽しく幸せな時間であった。「外伝、飛ばそうかな」と思っていた自分が申し訳なくなった。そう思いながら第二部を読み始めた。楽しい時間は長く続かないのかしらと、悪い予感の中で読書を進めることとなった。
八咫烏シリーズが核心に向かえば向かうほど、その魅力的なキャラクターたちは世界の存続と引き換えに破壊といってもいいような事態に曝される。キャラクターの個性や繋がりを、物語の中の政治や情勢が壊していく。世界の存続と個人の存続は必ずしもイコールではないという残酷さが、骨身に沁みる。キャラクターを愛せば愛すほど辛い気持ちになる。
早く続きを読みたいな~。辛い話になってきている八咫烏シリーズの世界にもたらせられる救いがあるのならば、実際のこの世界も救えるのではないかと、何故かそう思う私がいる。そう思いたいがために、希望を求めて物語を読む。その希望は、個人の光を見いだすことから始まるのかもしれないなと外伝を読んだ今は思った。